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2010年04月29日

赤プリ閉鎖

今日、赤プリ(赤坂プリンスホテル)が来年三月で閉鎖されるというニュースが報道されていた。それに対し、マスコミは「粛々と」その事実を報じるだけである。政治的思惑があるのでなければ、無知、または何らかの見識あるいは深みのある思想(都市経営に対する信念)を持ったジャーナリズムとはいえない。これがマスコミのレベルとあきらめるとしても、このような薄っぺらな知識と見識でマスコミがあらゆる報道を行っていることは頭に入れておくべきである。

旧館は残されるようだが、新館は解体される運命と思われる。新館は1983年の建築でまだ30年にも達していない!!。これだけでもマスコミがお好きな環境、省資源からの突っ込みくらいは入れられるのではないか。

それはともかく、設計は故丹下健三氏だ。モダニズムの旗手として名高い氏の代表的な建物である。丹下さんだから残せと言うつもりもないし、決して残すべき美しい建物とも思わないが、一つの記念碑的建物であり、ある時代を象徴している建物には間違いない。仮に、ファシズム吹き荒れる時代に国民を抑圧した刑務所であったとしても、その時代を記憶するに足る忌まわしき建物としてそれは残されるべきなのだ。

日本の歴史として赤プリは切っても切れないその時代を記憶しており、それはもはや民間私企業の枠を超えて存在している。そういう意味では西武と丹下さんは時代の寵児と言える。もし筆者が強権を発動できる都知事なり総理大臣なりせば、赤プリ地域を高度成長期またはバブル期の記憶建築物として保存する措置を執らましものをといいたいくらいだ。西武をいじめるわけではないが、不動産業の利益は都市経営の中での繁栄の享受であり、自分の御都合だけで都市を弄ぶべきものではない。

西武が維持経営できないとするならば、その経営内容(赤字見込み幅)を公開させ、その赤字をカバーする第三者に事業委託し、必要な利益を同社に還元させてもいい。その補償に税金が必要なら、10年程度を限度につぎ込む覚悟を都知事が表明してもいいのではないか。これは一つの文化政策、都市政策である。思い切った金を使わなければこれからの都市を守ることはできない。単に古くなったという理由で民間の所有だから壊してもいいという論理を許してしまったら歴史の継続は担保できない。誰か賛同者はいないだろうか。

2010年03月27日

住宅版エコポイント考

家電に対するエコポイントと同様、住宅の新築やリフォームに対してもエコポイントがつく(政府からの補助金が出る)制度が作られた。
ここではマンションのリフォームに限って考えてみる。

今回、エコポイントの対象となるリフォームの部位は窓の断熱強化、外壁、屋根、天井の断熱材施工である。このうち、共用部分に該当しない部位は内窓設置と天井の断熱で、ガラスの交換は原則としては共有部分なので管理組合の判断となるが、ルール・運用次第では個人でリフォームが可能だろう。

住宅版エコポイントでは最大30万ポイントがもらえるが、これらのリフォームだけでは規定上標準的な住戸で5万〜8万ポイントくらいが限界と思われる。頭のいい人はこれにバリアフリー改修を加えてさらに3万ポイントくらいは稼ぐかも知れないが。

最も望ましいのは外壁や屋根、窓の断熱強化を同時に図ってマンション全体を外断熱建物とすることは明らかだ。国交省もこれを目的としたことと思われる。

しかし、これらのリフォームは大規模修繕並の大がかりな工事が必要である。大規模修繕は修繕計画に従って10〜15年に一度行う工事であるから、それなりに準備を重ね、区分所有者の合意形成も図ってやっと行える大仕事である。急に制度ができて1戸当たり30万円をもらえるからといって、工事をやりましょう、はいそうですねというわけにはいかない。

たとえうまい具合に修繕のタイミングがあって、制度を利用できるとしてもせいぜいマンション全体の20分の1か30分の1だろう。この制度が10年間は恒久的に続くというのであれば、かなりのマンションで、この間に外断熱リフォームを実施することは十分可能と思われる。

部分的な断熱がどれだけの省エネになるのかという予測も検証も行わないまま、国民の税金を使う制度が成立した格好ではあるが、省エネの効果をきちんと公表した上で、見直すべきところは見直してでも、この制度を10年は続けて欲しいと願っている。民主党への風当たりが強く、政策軸が目まぐるしく変わる中、これくらいは頑張って欲しいものだ。

2010年02月10日

内窓はお得か

表題は日経アーキテクチュア(ケンプラッツ)2010年2月10日の記事(住宅版エコポイント「内窓はお得」は本当か?)からとっている。

記事を要約すると、住宅版エコポイント制度で需要拡大が見込まれるのが窓の断熱リフォームである。サッシメーカー各社はこれを好機到来ととらえ、特に内窓の販売に力を入れている。

その理由として、住宅版エコポイントの仕組みに潜む矛盾があるからだと指摘する。その矛盾とは、住宅版エコポイントのポイントはエコ住宅を新築した場合でも最高30万ポイント(30万円)。仮に3000万円かけて住宅を建設しても還元率は1%、1500万円でも2%。

ところが、内窓を取り付けた場合は(ケースによって異なるが)還元率は10%を超え、20%に達することもあるという。サッシの交換や、外壁を断熱リフォームする工事では新築工事よりはいいものの、こんなに還元率が高くはならない。一般のエコ家電が5〜10%であることを考えると大きな開きがある。

日経アーキテクチュアは、内窓の省エネ貢献度はそれほど高くはないとほのめかしているのである。本来エコポイントは省エネ貢献度に応じて発行すべきもので、このままでは内窓に走って折角のエコポイント(税金だ)が無駄に使われはしないかと危惧している。

日経アーキテクチュアの言うとおりだと思う。サッシそのものを断熱性の高い二重ガラスや真空ガラスなどに交換するのに比べ内窓の省エネ性能は劣る。詳しくは説明しないが、外側のガラス面に結露が以前より増えるのは物理現象として火を見るより明らかだ。部屋うちが狭くなり、前よりもガラス面に結露が発生することに気づいたら、取り付けた人は落胆するのではないか。

「住宅版エコポイント制度の立ち位置が、温暖化防止を目的にしたものであるならば、省エネを確実に推進していくためにも、ランニングコストの低減を含めて、できるだけ性能の高いサッシを取り付けるようなインセンティブを与えるべきだったのではないか。事務手続きが煩雑になることを嫌ったのは分かるが、サッシの大きさだけでなく、性能に合わせて、発行ポイントをもう少しきめ細かく設定した方がよかった。せめて、これからの制度運用時に、サッシの性能と住宅全体の省エネ効果を消費者に対して明確に数値で示すなど、商品を選ぶための基本情報を的確に提供してほしいと考えている。」(同記事)

全く同感である。

2010年01月28日

エコポイント考

 民主党政権になって、住宅エコポイント制度が話題になっているが,この新鮮味と政策効果はどうなのだろうか。

 新鮮味としては、住宅・建設部門に焦点を当てたという意味で新しさがあるが,平成20年度環境省のエコ・アクション・ポイント、21年のグリーン家電普及促進事業によるエコポイント、環境対応車普及促進税制(いわゆるエコカー減税)、太陽光発電システム補助金制度などの延長線上にあり,民主党ならではの政策というわけではなく新鮮味・独自性は薄い。

 そういえば,自民党政権の批判材料として定額給付金の交付制度があったが,エコポイントはどうだろうか。

 これについては夙に昨夏、立命館大学教授の佐和隆光氏が「ケインズ主義的財政金融政策の効能は、発展途上諸国のそれに比べて、はるかに乏しい。理由は明らかである。耐久消費財はほとんど普及し尽くしており、買い替え需要しかなくなっているからだ。そのため、定額給付金であれエコポイントであれ、それらの個人消費支出刺激効果はきわめて乏しいのである。公共事業にしても、全国津々浦々、鉄道、道路、空港が整備されたいまの日本では、公共事業をしようにも、有意味なものは思い当たらない。」(ダイヤモンド社『経』2009年8月号)と述べている通りであり,アメリカでも自動車買い換え支援制度が終了した途端に販売台数減少のリバウンドが起こり、この制度が一時的な景気刺激策以上のものではないことが明らかになっている。

 住宅エコポイントのキモは住宅の省エネ化であり,これは長期的かつ効果的に取り組むべき政策アイテムである。そのためには技術的基準の策定と同時に確実な施工を行政なり第三者が管理するシステムとなっていなければならない。建設業者でもなく,技術基準の知識も不足しがちな自称デザイナーなどのリフォーム業者が自由に参入している業界では、悪徳業者の跋扈を許す余地があると指摘されても仕方があるまい。(「ちょっと待って、住宅版エコポイント」『日経ケンプラッツ』2010.1.28)

 今回のやり方は緊急対策とはいえ,いかにも準備不足で周知徹底に欠ける憾みがある。また、先のことは分からないにせよ時限的政策であり、長期的な展望を必要とする住宅建設や取得計画との整合性がなく、個人の購買行動を乱す要素にもなり得る。特にマンションのリフォーム・断熱改修という区分所有者の長期修繕計画に則った合意システムの中では、省エネ改修を(多くは窓と外壁の断熱改修であるが)前倒しで実行できるような管理組合は多くはないだろう。逆にこの政策を10年間は継続すると宣言することで,より的確にマンションの維持管理計画が立てられるのではないだろうか。民主党にはこのようなカネより頭を使った「口先介入」こそ望まれると言えるのではないだろうか。

2010年01月04日

マンションの寿命

「住宅の寿命」についてはこれまで「1財務省令による減価償却資産の耐用年数」、「2滅失住宅の平均築後年数(5年平均)」、「3残存戸数が50%を切る年数」などの考え方がある。

「1減価償却資産の耐用年数」は根拠が明らかでないが、木造22年、RC造47年、S造34年となっている。

「2滅失住宅の平均築後年数(5年平均)」という立場では、1996年の『建設白書』に「過去5年間に除却されたものの平均で約26年」とあり、これが長い間「住宅の寿命26年説」の根拠となった。
マスコミではこれがセンセーショナルに受け取られ、深い考えもなく一人歩きしている。この年数の意味するところはある時期に壊された住宅の寿命をもって、その他の存命中の寿命を推定することにある。しかし、質の悪い建物は早く寿命が尽きるが、質のよい建物は長期にわたって残る。壊された住宅の多くは住宅難と高度成長期の粗製濫造とが重なってできた粗悪品であり、決して存命中の住宅を代理するものではなかったようだ。

国土交通省は2006年7月3日、2015年度までの10年間で達成を目指す国の住宅施策の目標を定める「住生活基本計画(全国計画)案」を策定し、その中で良好な住宅ストックを形成するための目標として、滅失住宅の平均築後年数を【約30年(2003年)→約40年(2015年)】と数値化していたが、実際の計画が策定された9月にはこの数値目標は消えている 。
最近の住宅は質が高く、滅失住宅の統計でも大きく寿命が伸びており、現在では既に40年を上回っているのではないかと思われる。

「3残存戸数が50%を切る年数」とは、ある年に建設された住宅の半数が滅失するまでの期間を寿命とする考え方であるが、ここでは触れない。

で、マンションの寿命はいったいどれくらいあるのか。

日本建築学会はマンションの目標耐用年数を「鉄筋コンクリート造マンションで、高品質の場合100年とし普通の品質であっても60年」としている 。これは主に躯体の耐久性について技術的立場から述べたものである。

国はどう考えていたのか。
区分所有法の2002年改正時に、法62条の建替え決議における客観的要件(必要条件)に建築後年数を採用するか否かの議論があり、「30年」或いは「40年」といった数値が取りざたされている。当時はその年数を過ぎたものは全て老朽化かという意見と、その年数が過ぎるまでは建替えができないのかという議論がかみ合わず、結果的には築年数は客観的要件に採用されなかった。その結果現在の法律では築年数にかかわりなく建替え決議が可能となっている。数値の採用はなかったにせよ、関係者の間ではマンションの寿命をせいぜい40年とみていたことがわかる。

マンションという言葉は東京オリンピックの頃に生まれた言葉であるが、公団住宅団地にまで遡るとしても、昭和30年(1955年)あたりまでなので、一般的にはやっと半世紀が経過した程度と考えてよい。もっとも、数は2,800戸と少ないながら、関東大震災のあと1920年代後半から10年間くらいに作られた同潤会アパートもあるが、ある意味これは例外と考えても良い。

マンションが除却され、その後新たなマンションとして建替えられた事例はこれまでに約170例、約11,000戸ある。同潤会アパートはほぼすべてが除却され大半は新たなマンションに生まれ変わっており、この寿命は突出して長くほぼ70年前後を達成している。
筆者が調べてみたところ、30〜40年で除却された事例は4割、20〜30、40〜50年がそれぞれ2割という結果になった。これだけを捉えればマンション寿命40年説を裏付けるように見えるが、マンション500万戸の中のわずか1万戸の話であり、築30年を経たマンション100万戸の中でもわずか1%に過ぎない。

では99%のマンションは健全かというとそうではない。老朽化して建替えたくても合意が得られず、建替えられないマンションもある。これはこれで深刻な問題であるので、稿を改めて述べることにするが、30〜40年のマンションの多くは多少の問題はあるもののまだまだしっかりしている。これをもっと寿命を延ばすような維持管理こそ重要である。

躯体の保全のためには、躯体を温度変化や雨水から保護することが最も確実な方法である。外断熱がその手段の髄一であるのだが、資金、制度、業界の確執、過去の経緯などがあって順調な進展とは言えない。数少ない積極的施策の一つとして採用された住宅のエコポイントであるが、マンションの区分所有者(管理組合)にまでこの制度が伝わっていないように見えるのは誠に残念なことである。

2009年11月20日

コンクリートが危ない

 名著『コンクリートが危ない』(岩波新書)の著者、東京大学名誉教授の小林一輔さんが10月7日逝去されたとのことである。以下、ケンプラッツの記事(2009.11.18)を参考にしながらの感想である。

氏は「半永久的に使用できるはずのコンクリート構造物が早期に劣化している問題を取り上げ、警鐘を鳴らした」人である。

マンションの購入者は大体100年は保つのではないかと漠然とした期待を持って購入していたのだが、それがとんでもない幻想だった。これが「社会的常識」であったなら現在ほどマンションが普及することはなかったかも知れない。

コンクリートが長く保たない理由は氏によると、「責任施工という名の無責任施工が、コンクリート構造物の早期劣化を招いた」ことが大きいという。「アルカリ骨材反応」や「ほとんど除塩されていない海砂が使われていた」ことなど官学民を含む建設業界全体の汚点である。また政治屋の関与を許す土壌も問題がある。

「84年、日本住宅公団(その後、住宅・都市整備公団)が販売した埼玉県の狭山台団地で、異常な劣化が見つかる。」「狭山台団地の調査では、(氏の)研究室の総力を動員して「アルカリ骨材反応による劣化が原因」との独自の調査結果を発表した。住宅・都市整備公団はこれを否定し、意見が対立する。」

在野の研究者が官学の既成権威とぶつかり握りつぶされる構図はあるが、建築・土木の学者が官とこのようにぶつかることはほとんどあり得ないことで、非常に勇気のいることである。

「(氏が)土木学会コンクリート委員会の委員長をしていたときには、現場の生コンの品質を調べようと、ゼネコンの研究所に協力を求めて抜き打ち検査を実施した。結果はJISの規定から数パーセントしか外れていなかった。後でわかったことだが、情報は事前に漏れ、抜き打ち検査にはならなかった。」
 
 氏は「土木一家は閉鎖社会」と言ってはばからない。「何か事故が起きたときに組織される調査委員会では、結論はいつも“天災”か“当時の技術の限界”。みんなそこへもってくる」。

この構図はJR西日本の事故調査委員会でも見られる。

氏の予言。「事態を放置すれば、コンクリート構造物の一斉に壊れはじめる時期が2005年から2010年までにやってくる可能性が高い」、今まさにこれから起ころうとしていることである。

一方、建築学会は「建築物の耐久計画に関する考え方」(1988)で
「(鉄筋コンクリート建物の)耐用年数の定義は、建物の機能、性能が劣化によって低下して限界を超え、かつ通常の修繕や一部分の交換などを行っても、回復しないであろうと考えられる状態になった時とする。」としている。
で、どの程度の寿命かというと、
「建物全体の望ましい目標耐用年数は、住宅で高品質の場合で100年以上、普通品質で60年以上」であるが、「建物耐用年数は、コンクリートの品質や施工状況、外壁の仕上材、維持保全などの条件が年数を推定するのに関係してくる」。つまりは「逃げ」ではないか。

氏の言葉通り「責任施工という名の無責任施工」では長寿命は期待できないということだ。善良な施工者、技術者を何人も知っているが、組織・制度の壁に阻まれてその良心を発揮できない状況も多い。社会全体がこのままでは崩壊に向かいかねない。

氏のご冥福を祈る

2009年10月30日

『東京のマンション2009』

10月30日付の日経新聞東京地方版で東京都が発表した『東京のマンション2009』の解説が出ていたのでご紹介したい。マンションの行く末について深刻な事実が明らかになっている。

2008年末現在で都内にはマンションが146万戸あり、マンションに居住している世帯の割合は4世帯に1世帯。たかだかこの50年程度で都内に住む4分の1が、伝統的な一戸建て(またはせいぜい2件長屋)から、共同住まいに移動したということを「住宅革命」といわずしてなんというべきだろう。

戦後の住宅難があったことを知っている最後の世代も還暦を迎える時代となったが、住宅難の解消に果たしたマンション(集合住宅)の役割を見逃すべきではないだろう。

しかし、一方でその影は深く暗い。
築年数を経過したマンションが年々増加し、築40年以上のマンションが、10年後には4.5倍(24万5千戸)になるという。また、居住者の高齢化も進行し、世帯主が60歳代以上の割合は31.7%(平成15年度)から39.4%(平成20年度)になることが予想されている。

その結果、管理組合運営における将来への不安のうち、「区分所有者の高齢化」が51.1%と、「管理組合活動に無関心な区分所有者の増加」35.9%を大きく上回っている。

さらに、適切な時期に必要な大規模修繕工事が実施されていない現状がある。修繕積立金(月額)が長期修繕計画の予定工事費(月額)より少ないマンションが多く、今後、修繕積立金の見直しや資金調達方法の検討が必要というが、現実問題として困難な状況が目に浮かぶ。

また、 耐震診断は旧耐震基準下で建築されたマンションでも7割が未実施。耐震改修の費用がないことや区分所有者の耐震化に対する関心が低いことなどが、耐震化の進まない主な要因としている。

いずれ避けては通れない建替えの検討も進んでいない。その理由として、関心の低さ、費用負担、修繕・改修と建替えの適切な選択ができないことなどに加え、法令等の改正により建替え時に既存の規模を確保できない(既存不適格)ことなども要因の一つになっている。

今後、建替えに対する意識を高めるため、管理組合及び区分所有者への普及啓発や、コンサルタント、デベロッパー、区市町村担当者など建替え事業に関係する人材の育成を行うとともに、既存不適格マンションなどの建替えに当たっての制度的な課題に関して、柔軟な対応が可能となるよう国に要望していくなど、建替え円滑化のための環境整備を図っていくことが必要と結論づけている。

マンションの区分所有権は個人の重要な権利であるが、共同生活を送る上では他の権利者との調整(妥協)を図らなければならない宿命にある。等しく権利と義務を負った個人が、民主主義的に自らの財産(利害関係)について議論されるような場所は、管理組合以外ほかにはあまりない。合意形成を目指して、他人任せにできないぎりぎりの主張と妥協が繰り広げられる世界であるが、戦後民主主義教育の成果がここで試されているように思える。

2009年09月12日

国債

 今回の選挙は民主党の圧勝で終わった。今後の国づくりがどのように進むか、現時点ではこの半世紀で初めての本格的な政権交代に期待と不安がない交ぜになっているところといっていいだろう。選挙期間中に争われたマニフェスト(文書、演説)を評価して国民は政権を選択したことになっているのだが、マニフェストに書かれてないからといって民主党に期待することができないわけではあるまい。

 筆者が気になる問題(のひとつ)は国債の処理である。財務省のホームページには四半期ごとの借入金残高が公開されている。最も新しい情報は2009年6月末現在であるが、国債とその他の借入金を併せて860兆円になっている。これは赤ん坊も含めた国民一人あたり670万円(67万円の間違いではない!)、三人世帯で言えば2000万円である。

 一方厚生労働省によると2008年世帯あたりの貯蓄額が1143万円で、三人世帯の数字ではないが近似的にはほぼ1200万円に相当する。家族でこつこつ貯めた貯金は政府が作った借金に追いついてない。仕組みの上ではこの借金は現世代が積み上げ、その金で道路や公共施設、軍事、教育が賄われている。我々はまことに分不相応な贅沢をしたものだ。

 確か「財政再建」というかけ声がつい最近まであったような気がするが、どうなったのだろう。財政再建とは借金をしない収支構造を早く作り上げることと理解している。また借金の処理=返済も再建の目的である。

 で、民主党のマニフェストだが、文中に「国債」の言葉は一言もない。つまり今度は民主党が自民党に代わって借金を積み上げる番だと言うことだ。しまったと思ってももう遅い。実は自民党のマニフェストにも一言も「国債」という言葉はない。借金の返却や財政再建は今回の選挙では争点ではなかったのだ。こんな重要なテーマが争点になっていないことをマスコミは国民に知らせてもいない。マスコミは文書の行間・背面を読む力などないものと察せられる。

 自民党に愛想を尽かしただけでなく、政治家や官僚とともにマスコミにも愛想を尽かさなければいけない。国民を背中から叱咤して戦争に導いたのは軍人や政治家だけではなかった。

2009年08月08日

延焼防止性能

2009/08/06付けの日経BP社ケンプラッツで東京大学の野口貴文准教授が「外壁に延焼防止性能は必要ないのか?」という文章を寄稿している。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20090804/534502/

読んでいただければ一目瞭然だが、2008年1月に起きた米・ラスベガスのモンテカルロホテル火災と2008年夏の韓国のサンドイッチパネル火災、2009年2月の北京のTVCC火災の3つの火災事例を取り上げ、外断熱材料に確実な延焼防止性能の必要性を動画も使って述べている。

この中で、東京大学と建築研究所が共同で「透湿外断熱工法外壁の防火性能に関する基礎的研究」を進めていることを明らかにしている。透湿外断熱工法外壁を基にした試験体による火災実験の結果を8月の建築学会で発表する予定とのことでその成果に注目したい。

外断熱工法には湿式以外にパネルを使った乾式工法もある。これまでサンドイッチパネルは火災に対し比較的安全と思われていたが、2008年夏に起きた韓国の17階建てビル火災ではポリスチレンフォームの断熱材を金属薄板ではさんだサンドイッチパネルが使われていた。韓国では数えきれないほどのサンドイッチパネル火災が起きており、社会的な問題になっているとのことだ。

この記事からは、ポリスチレンフォームを断熱材に使いその外側を金属や無機質のパネル(サイディング)で覆っただけでは、空気層を通して瞬く間に上下に延焼していくことが予想される。この欄で何度も警鐘を鳴らして注意を促していたことを実証的に補強していただいたことになる。

全国に類似の「外張り断熱」や「外断熱」工法が施工されているが、できるだけ早く「安全な」湿式外断熱に切り替える(施工し直す)必要があるのではないか。「安全な工法」とは実証的に検証された工法であり、メーカーに根掘り葉掘り安全性を尋ねて採用しないことには、建築主は大変な被害を被るし、設計・施工者は加害者として賠償責任すら生じかねない。

2009年05月14日

北京超高層ビル火災報告書

 中国は隠蔽体質だから事故の報告は当分出ないと思っていたが、このほど財団法人日本建築防災協会が発行する月刊誌「建築防災」2009年4月号に「中国中央電視台(CCTV)新本部北棟ビル火災の教訓及び高層建築防火対策」劉文利(Liu Wenli)(中国建築科学研究院建築防火研究所(訳:砺波匡JICA専門家/国土交通省))という論文が掲載されていて、中国に対する誤った先入観を大いに改める次第であった。

 論文によると、消防部門の調べでは「A類花火が外壁の断熱材に引火したことが直接原因」であるとし、火災の拡大には「内部の消防施設が使用段階になかった」ことなど複数の要因を指摘している。
 では外壁の断熱材とは何か。それは中国の「建築材燃焼性能分類でB2級に分類されている可燃性断熱材の断熱用押出ポリスチレン(XPS)で、これは有機断熱材であり、一般的に燃えやすい」。
 また、その取り付け方法の問題として「通常、断熱材は外壁(筆者注:外装材)と内壁(同:コンクリート等の壁)の間に取り付けられるため引火しにくいが、今回のケースでは東西面の外壁にはチタン亜鉛合金板が使用されており、チタン亜鉛合金板は伝熱性が非常に高く、花火の熱がチタン亜鉛合金板を伝わり、間接的にXPSに引火したか、あるいは比較的薄いチタン合金板が花火により破損し、XPSに直接引火したと見られる」と結論づけている。

 ここでは、短時間に建物全体に燃え広がった原因などいくつかの記述を省略して断熱材の問題に限るが、この火災からの教訓は「断熱材の選定および構成方法を防火性能規範として定め、新たな断熱材の開発を行う」ことであると結論している。
 「中国の現行防火設計規範は外壁の断熱材の防火性能と構成方法について明確な規定はなく、ここ数年の省エネの高まりの中、断熱効果は高いが、防火性能の劣る断熱材が高層建築で大量に使用されており、構成方法に至ってはまだ規定などはない状況である。」
 よって、「関連の技術基準を制定し、防火設計規範に防火材の防火性能を盛りこ」むとともに、可燃性断熱材の使用が避けられない場合は「不燃性のロックウール板等で防火帯を作る」などの対策が必要と指摘している。

 日本の外断熱業界では「防火性能を第三者による検証で」とする考え方と、「見かけの仕様が同じであれば同様の性能が出せるはずだから性能確認は不要」という考え方が並行している。
 今回の中国の火災は後者の考え方からの訣別を促している。この業界の体質を見る限り、価格競争ばかりに目が向けられており、その中では国民の安全が守られることはとうてい期待できない。国民の安全に係わることである以上、国として外断熱工法の防火性能を材料(基準)についてもその構成方法(仕様)についても明確にする必要が迫られている。我が国で災害が起こる前に改革を行うことが、せっかくの教訓を残してくれた被害者(殉職消防士)に対し、責任を果たすことではないだろうか。