中国は隠蔽体質だから事故の報告は当分出ないと思っていたが、このほど財団法人日本建築防災協会が発行する月刊誌「建築防災」2009年4月号に「中国中央電視台(CCTV)新本部北棟ビル火災の教訓及び高層建築防火対策」劉文利(Liu Wenli)(中国建築科学研究院建築防火研究所(訳:砺波匡JICA専門家/国土交通省))という論文が掲載されていて、中国に対する誤った先入観を大いに改める次第であった。
論文によると、消防部門の調べでは「A類花火が外壁の断熱材に引火したことが直接原因」であるとし、火災の拡大には「内部の消防施設が使用段階になかった」ことなど複数の要因を指摘している。
では外壁の断熱材とは何か。それは中国の「建築材燃焼性能分類でB2級に分類されている可燃性断熱材の断熱用押出ポリスチレン(XPS)で、これは有機断熱材であり、一般的に燃えやすい」。
また、その取り付け方法の問題として「通常、断熱材は外壁(筆者注:外装材)と内壁(同:コンクリート等の壁)の間に取り付けられるため引火しにくいが、今回のケースでは東西面の外壁にはチタン亜鉛合金板が使用されており、チタン亜鉛合金板は伝熱性が非常に高く、花火の熱がチタン亜鉛合金板を伝わり、間接的にXPSに引火したか、あるいは比較的薄いチタン合金板が花火により破損し、XPSに直接引火したと見られる」と結論づけている。
ここでは、短時間に建物全体に燃え広がった原因などいくつかの記述を省略して断熱材の問題に限るが、この火災からの教訓は「断熱材の選定および構成方法を防火性能規範として定め、新たな断熱材の開発を行う」ことであると結論している。
「中国の現行防火設計規範は外壁の断熱材の防火性能と構成方法について明確な規定はなく、ここ数年の省エネの高まりの中、断熱効果は高いが、防火性能の劣る断熱材が高層建築で大量に使用されており、構成方法に至ってはまだ規定などはない状況である。」
よって、「関連の技術基準を制定し、防火設計規範に防火材の防火性能を盛りこ」むとともに、可燃性断熱材の使用が避けられない場合は「不燃性のロックウール板等で防火帯を作る」などの対策が必要と指摘している。
日本の外断熱業界では「防火性能を第三者による検証で」とする考え方と、「見かけの仕様が同じであれば同様の性能が出せるはずだから性能確認は不要」という考え方が並行している。
今回の中国の火災は後者の考え方からの訣別を促している。この業界の体質を見る限り、価格競争ばかりに目が向けられており、その中では国民の安全が守られることはとうてい期待できない。国民の安全に係わることである以上、国として外断熱工法の防火性能を材料(基準)についてもその構成方法(仕様)についても明確にする必要が迫られている。我が国で災害が起こる前に改革を行うことが、せっかくの教訓を残してくれた被害者(殉職消防士)に対し、責任を果たすことではないだろうか。