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2010年01月 アーカイブ

2010年01月04日

マンションの寿命

「住宅の寿命」についてはこれまで「1財務省令による減価償却資産の耐用年数」、「2滅失住宅の平均築後年数(5年平均)」、「3残存戸数が50%を切る年数」などの考え方がある。

「1減価償却資産の耐用年数」は根拠が明らかでないが、木造22年、RC造47年、S造34年となっている。

「2滅失住宅の平均築後年数(5年平均)」という立場では、1996年の『建設白書』に「過去5年間に除却されたものの平均で約26年」とあり、これが長い間「住宅の寿命26年説」の根拠となった。
マスコミではこれがセンセーショナルに受け取られ、深い考えもなく一人歩きしている。この年数の意味するところはある時期に壊された住宅の寿命をもって、その他の存命中の寿命を推定することにある。しかし、質の悪い建物は早く寿命が尽きるが、質のよい建物は長期にわたって残る。壊された住宅の多くは住宅難と高度成長期の粗製濫造とが重なってできた粗悪品であり、決して存命中の住宅を代理するものではなかったようだ。

国土交通省は2006年7月3日、2015年度までの10年間で達成を目指す国の住宅施策の目標を定める「住生活基本計画(全国計画)案」を策定し、その中で良好な住宅ストックを形成するための目標として、滅失住宅の平均築後年数を【約30年(2003年)→約40年(2015年)】と数値化していたが、実際の計画が策定された9月にはこの数値目標は消えている 。
最近の住宅は質が高く、滅失住宅の統計でも大きく寿命が伸びており、現在では既に40年を上回っているのではないかと思われる。

「3残存戸数が50%を切る年数」とは、ある年に建設された住宅の半数が滅失するまでの期間を寿命とする考え方であるが、ここでは触れない。

で、マンションの寿命はいったいどれくらいあるのか。

日本建築学会はマンションの目標耐用年数を「鉄筋コンクリート造マンションで、高品質の場合100年とし普通の品質であっても60年」としている 。これは主に躯体の耐久性について技術的立場から述べたものである。

国はどう考えていたのか。
区分所有法の2002年改正時に、法62条の建替え決議における客観的要件(必要条件)に建築後年数を採用するか否かの議論があり、「30年」或いは「40年」といった数値が取りざたされている。当時はその年数を過ぎたものは全て老朽化かという意見と、その年数が過ぎるまでは建替えができないのかという議論がかみ合わず、結果的には築年数は客観的要件に採用されなかった。その結果現在の法律では築年数にかかわりなく建替え決議が可能となっている。数値の採用はなかったにせよ、関係者の間ではマンションの寿命をせいぜい40年とみていたことがわかる。

マンションという言葉は東京オリンピックの頃に生まれた言葉であるが、公団住宅団地にまで遡るとしても、昭和30年(1955年)あたりまでなので、一般的にはやっと半世紀が経過した程度と考えてよい。もっとも、数は2,800戸と少ないながら、関東大震災のあと1920年代後半から10年間くらいに作られた同潤会アパートもあるが、ある意味これは例外と考えても良い。

マンションが除却され、その後新たなマンションとして建替えられた事例はこれまでに約170例、約11,000戸ある。同潤会アパートはほぼすべてが除却され大半は新たなマンションに生まれ変わっており、この寿命は突出して長くほぼ70年前後を達成している。
筆者が調べてみたところ、30〜40年で除却された事例は4割、20〜30、40〜50年がそれぞれ2割という結果になった。これだけを捉えればマンション寿命40年説を裏付けるように見えるが、マンション500万戸の中のわずか1万戸の話であり、築30年を経たマンション100万戸の中でもわずか1%に過ぎない。

では99%のマンションは健全かというとそうではない。老朽化して建替えたくても合意が得られず、建替えられないマンションもある。これはこれで深刻な問題であるので、稿を改めて述べることにするが、30〜40年のマンションの多くは多少の問題はあるもののまだまだしっかりしている。これをもっと寿命を延ばすような維持管理こそ重要である。

躯体の保全のためには、躯体を温度変化や雨水から保護することが最も確実な方法である。外断熱がその手段の髄一であるのだが、資金、制度、業界の確執、過去の経緯などがあって順調な進展とは言えない。数少ない積極的施策の一つとして採用された住宅のエコポイントであるが、マンションの区分所有者(管理組合)にまでこの制度が伝わっていないように見えるのは誠に残念なことである。

2010年01月28日

エコポイント考

 民主党政権になって、住宅エコポイント制度が話題になっているが,この新鮮味と政策効果はどうなのだろうか。

 新鮮味としては、住宅・建設部門に焦点を当てたという意味で新しさがあるが,平成20年度環境省のエコ・アクション・ポイント、21年のグリーン家電普及促進事業によるエコポイント、環境対応車普及促進税制(いわゆるエコカー減税)、太陽光発電システム補助金制度などの延長線上にあり,民主党ならではの政策というわけではなく新鮮味・独自性は薄い。

 そういえば,自民党政権の批判材料として定額給付金の交付制度があったが,エコポイントはどうだろうか。

 これについては夙に昨夏、立命館大学教授の佐和隆光氏が「ケインズ主義的財政金融政策の効能は、発展途上諸国のそれに比べて、はるかに乏しい。理由は明らかである。耐久消費財はほとんど普及し尽くしており、買い替え需要しかなくなっているからだ。そのため、定額給付金であれエコポイントであれ、それらの個人消費支出刺激効果はきわめて乏しいのである。公共事業にしても、全国津々浦々、鉄道、道路、空港が整備されたいまの日本では、公共事業をしようにも、有意味なものは思い当たらない。」(ダイヤモンド社『経』2009年8月号)と述べている通りであり,アメリカでも自動車買い換え支援制度が終了した途端に販売台数減少のリバウンドが起こり、この制度が一時的な景気刺激策以上のものではないことが明らかになっている。

 住宅エコポイントのキモは住宅の省エネ化であり,これは長期的かつ効果的に取り組むべき政策アイテムである。そのためには技術的基準の策定と同時に確実な施工を行政なり第三者が管理するシステムとなっていなければならない。建設業者でもなく,技術基準の知識も不足しがちな自称デザイナーなどのリフォーム業者が自由に参入している業界では、悪徳業者の跋扈を許す余地があると指摘されても仕方があるまい。(「ちょっと待って、住宅版エコポイント」『日経ケンプラッツ』2010.1.28)

 今回のやり方は緊急対策とはいえ,いかにも準備不足で周知徹底に欠ける憾みがある。また、先のことは分からないにせよ時限的政策であり、長期的な展望を必要とする住宅建設や取得計画との整合性がなく、個人の購買行動を乱す要素にもなり得る。特にマンションのリフォーム・断熱改修という区分所有者の長期修繕計画に則った合意システムの中では、省エネ改修を(多くは窓と外壁の断熱改修であるが)前倒しで実行できるような管理組合は多くはないだろう。逆にこの政策を10年間は継続すると宣言することで,より的確にマンションの維持管理計画が立てられるのではないだろうか。民主党にはこのようなカネより頭を使った「口先介入」こそ望まれると言えるのではないだろうか。

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