「日経アーキテクチュア」2003.8.4日号で山下設計が設計した東レ先端融合研究所が紹介されている。
これは鎌倉に建つ東レの研究棟で、写真で見ると東に開けた傾斜地に建つ3階建てながら、南北に120mも続く大きな建物、西面以外の3面がグラサルという施釉セメント珪酸カルシウム版で覆われている。
特に東面は斜面の形さながらの傾斜面となっており、外装が大きな下見板のように段差がつく独特のデザインで施されている。機能的な面での特徴として、外装材とコンクリートの間には30mmのグラスウールと通気層が設けられ、図面で見る限り(断熱厚さを除けば)文句ない乾式外断熱建物として計画・施工されていることがわかる。
外装材は特に高価なものではなさそうだから、極めて合理的な選択で、施工がしっかりしていれば雨水がコンクリートに達することは、タイル貼りなどと違ってまずあるまいから、このコンクリートの寿命は相当のものだろう。
余談ながら研究棟という要請から、天井面も高く、室内の広さも申し分ないので万一この建物を将来研究所として使わなくなったとしても、どのような用途にも転用が可能だろうし、ここを使用したい企業もすぐに現れることだろう。東レは経営判断から見ても資産が低下しない建物に投資したと言える。機能とコストパフォーマンスを含めた総合的デザインが強く望まれるケースで成功した例と思われる。
同じ号ではアムステルダムに建つ約5000平米の2階建てオフィスの改修・増築プロジェクトも紹介されていた。
こちらは外装を銅のパンチングメタル(有孔版)で覆い、更に室内側にも有孔を施したベニヤ板で、その中に照明・配管などを納めてすっきりと統一感を醸し出したデザインにフォーカスを当てている。誌面では触れていないが、断面図をよく見ると(英語で材料名が書かれているので正確な材料がわかりにくいが)どうやらポリスチレンボード(図では「固形断熱材」)の上にグラスファイバーメッシュで押さえた塗り材(「スタッコ」)となっているので、これは紛れもない湿式外断熱工法にあたる。
改修部分が4600平米、増築が300平米で元の建物は19世紀のレンガ造建物というから驚く。それらが外断熱であったはずはないし、元々の用途が何であったか記述がないが、1世紀を越えてなお現役で使われる建物はそれだけで多くのことを考えさせる。建物に対する心構えと維持保存する心がけは大いに見習わなければいけない。 |