8月22日付の日経新聞で『「百万人打ち水」冷夏で空振り?』という記事が掲載されていた。そのウェブサイト「大江戸打ち水大作戦」と新聞記事によると、8月25日の正午を期して、都内で百万人が一斉に打ち水をするよう働きかけを行っているが、冷夏のせいで危機感が薄れたのか登録者は1700人しか得られなかったという。しかしウェブは意気軒昂。予定では風呂の残り水などで道路、公園、建物の外周など可能な限り広範囲に水を撒くことを目指している。
「1平方メートルあたり1mmの打ち水で、どれだけの効果があがるかを正確に述べるのは、ケースバイケースなので難しいですが、 地上気温を2度以上は下げられるのではないか と予想しています。温度が2度下がった場合、三菱総研による時刻別の気温感応度の結果から試算すると、 4%程度最大電力を削減 が期待されます。」 これだけの水を撒くには「東京都区全体で考えた場合、面積280平方キロメートルで実施すると、必要量は約28万トン」ということになり、百万人が参加した場合、一人当たり平均280リットル。およそ風呂の残り水一杯という見当だ。
いいところに目をつけたうまい考えで、人が集まれば実行も可能だ。水を撒けば温度が下がる原理は地面や建物の熱を水の気化熱で奪うというもので科学的。しかし、エネルギー不滅の法則からいうと下がった熱のエネルギーは水蒸気の中に吸収されその分湿度は上がってしまう。
極めて単純かつ大雑把に考えてみた。30度・60%の気温・湿度のところに、1平方メートルあたり1mm(1000g)の打ち水をして、極めて短時間に1000gの水蒸気ができると仮定すると、これは地上60mまでの空気を2度下げる代わりに湿度を70%に押し上げる。不快指数としては余り変わらない結果となりそうだ。それにクーラーの電力消費量が減るという考えは誤りだ。クーラーは気温が下がった空気で減った電力を湿度を下げるために余計な(理論的には同量の)電力を消費する。もっともこの高い湿気の空気をうまく風が吹き飛ばしてくれれば温度が下がった分だけ快適で省エネになるが、これだけ広い範囲で打ち水されるとちょっとやそっとではさわやかになりそうにない。どうやら打ち水は自分の家の前にだけ撒いて縁台で涼む極めて「個人主義的」な消夏方法といえる。クーラーが自分の熱を下げるために他人に迷惑をかけるのと同様だが、余計な熱をプラスしないだけ打ち水は地球に優しい。
この計画に水を差すつもりはない。都会に熱を吐き出しているクーラーや自動車の対策を考えるきっかけになる壮大な実験として応援したい。 |