親父がペンキ屋で家具や木工品の塗装をやっててそれなりに口に糊してたんだが、30年ほど前から工務店におだてられて次第に大きな建物の塗装も手がけるようになったんです。塗装の相手は木ばかりじゃない。鉄もあればアルミもある。はじめはコンクリートは面が大きいものだから仕事には困りませんでした。この間の技術革新もたいしたものさ。アクリルだフッ素だと横文字だらけの塗料や溶剤が次から次へと生まれて毎年毎年勉強勉強という時代でした。
コンクリートの塗装ですか、いろいろありますよ。コンクリートの風合いをそのまま出すような透明の塗装から、皮膜を厚く作って地肌を守るものまで。どれだけ保つかって?そりゃ色々あるわね。安物から高級品まで、ま、値段に比例するといやあいいかな。
しかしコンクリートは手がかかるねえ。そもそも塗装ってえのは下地が勝負なんだよ。下地が悪ければどうにもならない。特に外壁の塗装にはまいっちまいます。できあがりは大丈夫なんだが、そのうちコンクリートのアルカリで背中をつつかれ、前からは日射にやられ、コンクリートがひび割れると地盤沈下、塗装ってのは全く砂上の楼閣ですよ。どんなにいい塗料使ったってだめなことがあってね、下地のひび割れまで塗装が隠すことはできないんです。最近は汚れ難いだの、色落ちしないだの優秀な塗料がいくらもあるんだが、下地が長く保たねえもんだから高い塗料は使えねえんだ。ほんとはいい塗料を使いたいってとこでも、5年もすりゃ塗り直しに決まってるもんだからそれまで保てばいい位の安物になるんでさ。
実は塗装の仕事は今は新築より改修と補修の方が多いんだわ。仕事が途切れないのは目出度いんだが、同じことばかり繰り返しているのはなんかもったいない話だよね。それでも最近はこの業界にも外断熱ってやつが入り込んできてね、下地がコンクリートと違って発泡の断熱材の上ならクラックが入らないから塗料も長持ちするらしいよ。まあ、これからの仕事だからまだ何とも言えないけど、外国じゃ相当なもんだってね。 |