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清心幼稚園
2004.7.12
 清心幼稚園は群馬県前橋市に建つ創立109年の歴史を持つ幼稚園である。1890年代にアメリカン・ボードという団体から派遣された宣教師たちによって設立され、70年を経過した旧園舎は木造の二階建てで、文化財的価値があったものと思われるが、戦災にも遭っており、それなりに寿命を全うした後、多くの記憶を残してこの4月に建て替えられた。

 新園舎は三階建コンクリート造であるが旧の名残をデザインにとどめ、シンプルで清楚、明るい外観を持つ。南には園庭に面した大きな開口部があり、園児たちが屋内・屋外を思う存分走り回れそうだ。廊下や階段回りのホールにも園児を伸び伸びと遊ばせる設えがあり、隅々にまで行き届いた安全と楽しさへの配慮が感じられる。室内の柱や多くの壁はコンクリート打ち放しで仕上げられていて、どの打ち上がりも美しく巌の雰囲気すら与えている。

 前置きが長くなったが、先日(2004年7月10日土曜日)見学をお願いして拝見させて頂いた。見学の目的は外断熱建物の夏場の効果・快適性を実感するためである。ちなみに当日までの10日間、前橋での気温は下表の通りである。生憎到着した午後1時半頃から小雨が降り出し日差しがなくなったが、それでも外気温は32度近くあった。

2004年7月 天気 最高気温 最低気温
1日 晴時々曇 33.3 21.8
2日 30.7 20.4
3日 31.0 18.6
4日 晴後一時曇 32.3 18.3
5日 31.1 24.5
6日 36.0 24.7
7日 36.5 25.7
8日 36.7 24.7
9日 晴後一時曇雷を伴う 36.3 22.8
10日 曇後雨雷を伴う 32.9 23.3
(前橋地方気象台データ)

 当日は休園日で事務長さんお一人に出勤して頂きご案内を受けた。パンフレット(カード)をご覧頂きたいが、東側部分にあるエントランス・管理室とその二階の職員室(吹き抜けで同一空間)ではエアコンを使用することがあるとのことだが、園児の教室やホールはエアコンを使用しないという。普段の午前中は快適で、さすがに午後は暑くなるそうだが、汗をかかせる方が園児の健康にいいとの方針だ。結果的に、建物の大部分はいわゆる自然室温(機械装置に頼らない室温)を長期に維持していることになる。

 当日教室の気温は28度程度。柱、壁、床、天井の温度をレーザースポット式の温度計で測定すると27度から28度。この時期、コンクリートの部屋に入った時は暑さでムッとするものだが、連日30度を超える日が10日も続いたエアコン不使用の部屋というのに、見学中汗をかくこともない。夜中は積極的に窓を開け、通風をとって建物の熱を下げているそうだ。熱帯夜の続く東京より前橋の夜間の気温が低くこの点有利に働いている。外断熱のお陰で普段窓を開け放して外気の暑い空気を取り込んでいても、夜間の冷気を利用すれば建物の温度がそれほど上がることがないよい例で、外断熱は開放的な造り・開放的な住まい方で快適ということだ。これは冬季にも当てはまることだろう。

 書き忘れたが、外壁は湿式外断熱工法(ドライビット・アウサレーション)。断熱材には50mmのEPSを使用している。そのため、内外の仕上げでメンテナンスを要するところが極めて少ない。屋根は瓦(一部OMソーラー)で外壁は前述の通りだから、10年間で補修箇所は窓周りのシール程度。内部も塗装部分は少なく、階段鉄部程度。打ち放し部分は放って置いたら味が出るだろうし、人の手の届かない高さにある壁が石膏ボードに白いペンキ、これは汚れない。他は床を始め木を多く使用しているので手のかかる材料は少ない。接着剤にさえ気をつけてあれば(もちろん配慮済み)シックハウスの恐れもない。冬季のためにOMソーラーが設置されているので冬の暖房は相当寒い日でも十分だろう。開放的でカビの発生余地がない。設計にこれだけ配慮すれば、維持管理費(ランニングコスト)は少なく、かつ長保ちする。バランスのとれた外断熱建築の見本だ。

 元の面影を残す瓦屋根と土壁のイメージは、これまでの1世紀に続き、これからの100年もまた多くの思い出を卒園生に残し続けることだろうと考えながら帰路についた。設計・監理はStudio PRANA。

 余談ながら、この幼稚園の向かいにある南面ガラス張り、東西の外壁が打ち放しコンクリートで仕上げられた某全国紙前橋支局の建物は好対照である。想像に過ぎないが、2〜3年早く建てられたこの建物は幼稚園より維持費が数倍かかり、快適性は劣り、寿命は半世紀保たないだろう。(外断熱改修をしないとすればの話だが)