| 今回は戸建て住宅から参考になるお話を。
北海道で仕事をしている石井さんという建築家が、自ら工務店も経営する傍ら住宅相談に乗っているホームページがあって、正確な判断と指摘が出ていたことを題材にこのコラムで取り上げさせて頂くことにした。実際の相談内容とその回答は、石井さんのホームページを見て頂ければいいのであえて再記述はしない。まずはよくお読み頂きたい。
問題は外断熱工法は断熱材だけが躯体(ここでは木材の骨組み)の外側にあるのではなく、それを覆う外装材(多くはサイディング・モルタル・リシン・タイルなど)も外側にあることだ。木造住宅では外装材にサイディングを使うことが多いので、外張り断熱でも断熱材を挟んで外側に無機系のサイディングを取り付けるケースがある。この例のように、断熱材が100mmともなると、15mmの通気層をとった上でサイディング+タイルでは、外表面は柱から130mm程外側になる。200mmの長さの釘を300mmピッチで打ち付けても、断熱材は空気の固まりだから、釘の先は柱に刺さっていても、釘の大半は何の支えもなく、その上釘頭の付近に重いものがぶら下がっている格好だ。地震などでサイディングが揺れ動く怖れがあり、最悪の場合は相談例のように外壁が剥離する結果となる。
木造の例は他山の石だ。コンクリートの外断熱も同様で、釘で打ち付ける訳ではないが、外壁面から100〜150mmも離れた位置にセメント版やタイルなどの重量物を持ち出している、いわゆる乾式工法の外断熱仕様の場合は十分に荷重を考慮して、支えの金物の強度や耐久性などに細心の注意を払わなければいけない。少なくともコンクリートに直接タイルを貼付ける内断熱工法よりは荷重条件で不利であることは発注者・建物所有者もよく自覚する必要がある。
ここにおいて、湿式工法による外断熱仕様は有利な点がいくつか見えてくる。湿式外断熱工法の中にはタイルを貼らずに断熱材にモルタル系材料の上塗りという軽量な仕様が多く、断熱材である発泡スチロール(EPS)が厚くなっても内断熱工法のタイル仕上げよりもかなり軽量となる。EPSが躯体に直接貼り付けられているので垂れ下がる危険は皆無。構造計算を行えばわかることだが、建物の外装タイルを全部剥がしてEPS湿式外断熱仕上げに置き換えると、自重が減った分建物の耐震強度が増える。
タイルを剥がしてダイエットできるマンションにとっては、このような外断熱改修は構造上も有利だ。新耐震以前の旧基準法時に建築された築30〜40年のマンションなどは、このような観点からも耐震改修を含めた外断熱改修の可能性を検討してみてはどうだろうか。一見高級に見えるタイルはその重さのために地震時に建物を大きく揺する原因でもあるのだ。 |