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構造設計事務所
2005.11.21
 先日、姉歯構造設計事務所が構造計算書を偽造するという前代未聞のとんでもない事件を引き起こして世間を騒がせているのでこれを題材にひと言。

 一般の人にとっては構造事務所とは何者?という感じがあるだろうし、件の設計者がたった一人で何十棟もの大きなマンションやホテルの仕事をしてきたことにも驚いたことだろう。

 一般に建築設計者というと意匠設計者、いわゆるデザイナーを指す。設計には意匠・構造・設備(空調・電気・給排水)の分野があって、意匠設計者は全体のデザインとともにそれらを総合する役割を持つ。小さな規模であってもコンクリート構造物であれば分業体制で設計を行うのが普通である。

 無論意匠設計者といえども、構造について基本的な知識を持ち合わせていなければプロではない。図面や現場を見て今回の嘘が見抜けなかったとしたら。お粗末・無能・無責任という烙印を押されても仕方がないだろう。

 筆者の知る限り、構造設計者は建築設計者の中でも優秀な人が多く、パソコンのお陰で相当の規模の建物であっても個人で構造設計ができるものである。デザイナーや施工会社が懇願・強要しても構造設計者が必要と認めた柱・壁・梁の仕様を変えることは九分九厘ない。構造設計者にとって、構造をごまかしても何ら得るものはないこともあるが、やはり構造の重大性についての自覚を持っているからである。

 にもかかわらずこのような事件が起こったことはまさしく衝撃である。今回しでかした結果と影響の大きさについて、彼は充分理解できるはずであり、想像力が欠けている人間とも思えない。

 思うに、今回の行為は一種の愉快犯、あるいはゲーム感覚がしからしめたものではないだろうか。報道から察すると、彼は手抜きをやったわけではなく、確信的に(何の得にもならない)ごまかし計算をやったのだ。それらがいくつもの関門(チェック)を簡単にすり抜けていくことに快感を覚えていたのだろうか。あるいは自分の廻りには素人衆団しかいないのかと、ほくそ笑むよりもあきれ返っていたのではないだろうか。

 この事件から教訓を得るとしたら、容易に見抜けるはずの構造計算書・設計図書の誤りを10棟以上も通過させ、そのまま建築してしまった設計者、検査機関、施工会社という素人同然の集団が「専門家然として」存在していたということだろう。図らずもこの設計者は業界に潜んでいた鵺を炙り出して白日の下にさらけ出したことになる。

 外断熱も、このような「専門家然」が幅を利かすことがないことを願うものである。