| 今年の1月8日長崎県大村市で高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」から出火、鉄筋コンクリート一部木造平屋約300平方メートルを全焼し入所者男女7人が死亡した。
直後に報じられた地元長崎新聞の記事。
『さくら館は認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)として、大村市の有限会社はるるが2003年9月、県の許可を受けて開設。リビングを間に挟んで施設の両側に九部屋があり、9人(男性1、女性8)が職員の世話を受けながら生活。職員は日中3人、夜間1人が常駐していた。
出火当時、宿直勤務だった代表者(38)が110番通報。現場到着した警察官が部屋の窓を外から割って4人を救出したが、残る5人の部屋は火の勢いが激しく助け出せなかった。スプリンクラーは床面積が設置基準以下のため付いていなかった。
グループホームは「要介護一以上」で認知症状を持った高齢者が共同で生活する。夜間については、入所者6〜9人につき当直職員が一人以上いれば厚生労働省の基準を満たす。だが大村市内の別のグループホーム関係者は「そもそも9人の認知症のお年寄りを夜間一人で世話するのは無理な話」と打ち明けた。
また特別養護老人ホームなどの施設と違い、同省はスプリンクラーや火災報知機の設置を義務付けていない。さくら館は床面積280平方メートルの平屋だったが、粉末消火器三本と七つの避難誘導灯があるだけだった。それでも「この施設は消防法で定められた基準をクリアしていた」』
当初はグループホームの管理や制度のあり方などが専ら関心の対象だったが、4月7日毎日新聞が次のような報道をするに及んで事件の性格は大きく変わった。
『建物は、耐震偽造事件で捜査対象になっている総合経営研究所(総研、東京都千代田区)と、木村建設(熊本県八代市、破産手続き中)系列のコンビで建築』されたものだった。更に次のように続く。
『3月21日、施設の解体に合わせて、「日本グループホーム学会」の1級建築士らが検証を実施したところ、火災で断熱材が溶け落ちて露出したコンクリート外壁は空洞だらけで、直径20センチに及ぶものも複数あった。また、建築基準法では、鉄筋を覆うコンクリートは厚さ3センチ以上と定めているが、鉄筋が縦1メートルにわたりむき出しになっている個所もあった。』
『「やすらぎ」に用いられたのは、総研が日本に導入したAAB工法。「型枠(発泡スチロール製)を外す手間が省けて、工期の短縮、コストダウンにつながる」と、コンサルタント相手の木村建設などに売り込んでいた。しかし、型枠を外さないため、コンクリートの打設状況を視認出来ない欠点がある。空洞ができた原因は、型枠の固定が甘く、生コンの圧力でたわんでしまい、液状成分が外部に漏れ出し、砂利などの骨材だけが残ったためとみられ、この施工不良は「ジャンカ」と呼ばれる。』
『検証写真を分析した東京大大学院の野口貴文助教授(建築防火工学)は「重大な施工欠陥で、空洞付近のコンクリートの耐力はないに等しい。発泡スチロールは軽すぎるので、膨らまないよう固定する施工技術がないと鉄筋もずれる。鉄筋が腐食して経年劣化が進めば、耐力はさらに低下する」と指摘する。』
「耐震設計偽装(幇助・教唆)」疑惑では追及の手を逃れるかに見える総研、木村建設コンビは、手抜き工事隠蔽工法ともいえそうな欠陥断熱工法の推進者でもあったのだ。
『<AAB工法>
アドバンスト(進んだ)オルタナティブ(取って代わる)ベター(より良い)の略。木板などの型枠の代わりに、発泡スチロール板を内側と外側に立てて四方を囲み、鉄筋を立てて生コンクリートを流し込み外壁を作る工法。固まった後も発泡スチロールは取り外さず、そのまま断熱材として活用する。カナダで地下構造物用に開発された。』
当コラムでは既に2度に亘って、型枠兼用断熱工法の非に警鐘を鳴らしてきた。(「外断熱は「後張り」で」2003.03.23、「外断熱は「後張り」で(再び)2004.02.09」参照)。耐震偽装が行われていない建物であっても、このように施工された建物はコンクリートの打設時に欠陥の有無を確認できない。明確な耐震偽装としてリストアップされていない建物でも同様の事例が発見される可能性がある。
ところでこの建物の工事監理者(一級建築士)は誰だろう。彼はコンクリートの仕上がりを見ずに監理したことになる。性善説が前提の検査などどこにもない。罰則はたかだか50万円、せめて新聞で晒し者にしてやりたい。コンクリートの品質がチェックできない工法は一刻も早く禁止するに如かずだ。
欠陥工事に公金補助がなく、耐震偽装にはあるというのもおかしな話。しかし何でも税金で援助することが望ましいわけではない。健全な制度の構築が必要ではあるが、一方で自己責任と自衛も重要だ。専門家を選ぶ際は能力だけでなく信念と良識を持った人間を選択しよう、その選択眼は持ちたいものだ。 |