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東京消防庁の研究発表

 東京消防庁では、若い消防職員を大学等に研修生として委託し、防災などの研究を共同で行わせている。先日(2005年3月12日)その研究発表会が消防学校で行われたので傍聴させて貰った。これは、その中の外断熱に関する研究発表の傍聴記である。

 発表者白澤卓司氏は、東大工学部の建築学科材料研究室(野口研究室)に在籍する研究者で、外断熱に関する防災について研究を行った。標題は『耐火外壁に断熱材を施す外断熱工法の防火性能の現況と課題』である。

現況を

  • 「1970年代以降、日本でも外断熱建物が建築されてきたが、建築基準法の制約が大きく、建築数は限られていた。」
  • 「地球環境温暖化対策としても熱負荷削減手法として外断熱が再評価されている。」
  • 「平成10年、12年の基準法の改正により、耐火構造の外壁に施す外断熱工法に対して有機系の断熱材は工法を問わず施工可能となったため、多様な外断熱工法が用いられるようになった。」

との認識に立ち、建築行政が次のように変化したと述べる。

  • 「改正前の基準法下では昭和60年、財団法人日本建築センターに外断熱工法防火研究委員会が設けられ、外断熱工法に要求されうる防火性能を明らかにするため、様々な実験と研究が行われた。その成果として安全側の要求が規定され、供給側の費用負担が大きく、結果として有機系発泡外断熱工法の需要が拡大しなかった。」
  • 「平成12年以降外断熱に対する防火規制が変わり、屋外からの加熱に対し、『室内側で可燃物の燃焼のおそれある温度以上に上昇しないこと』、『構造耐力上支障のある損傷を生じないこと』を判断することのみとなった。」
  • 「また、日本建築行政会議の全国会議で『耐火構造の外壁に木材・外断熱材等を施す場合の取り扱い』で構造に必要な性能を損ねないと判断できるものであれば支障がないとされ、一定の遮熱性能を損ねる場合以外は、大臣の認定無しで有機系の断熱材を用いた外断熱を施すことが可能となった。」

発表者はこの状況を捉え、

  • 「今後、耐火構造の外壁に施す外断熱工法が増加することが予想され、同工法に対しては構造的な耐火性だけでなく、燃焼性についても目を向ける必要がある。」

と指摘、早い段階で有機系外断熱の利点が認知され、普及が進んでいる米国に目を向ける。米国での外断熱が1969年に導入され、3億?以上の施工実績に触れたあと、米国の建築基準が民間組織により開発されたモデルコードを採用していることなどの違いを述べ、米国の外断熱に対する防火性能の考え方を整理している。それによると、火災安全への評価項目が

  • 「垂直・水平方向への延焼に関連したこと。」
  • 「外装材の剥離及び脱落に関連したこと。」
  • 「煙の発生と毒性に関連したこと。」
  • 「熱可塑性の材料の溶滴に関連したこと。」
  • 「消防の放水による衝撃に関連したこと。」

に亘ることを指摘。その検証のため行われる「実物大防火試験」、「中規模多層階防火試験」の概要を説明した。その上で、日本における外断熱工法の火災安全上の課題として、

  • 「耐火試験での判定方法は安全側ではあるが、輻射熱による着火・開口部からの延焼性を主眼とした試験の方が現実的な火災に近似した防火性能を評価できる。」
  • 「JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)の燃焼性についての項目は小火源の試験であり、JASS 24(断熱工事)は建築基準法改正以降の改正がなく、また、日本ではまだ、米国のように統一的な工業会が発足しておらず、工業会としての標準仕様書もない。」
  • 「日本では屋内で実験ができる『中規模多層階防火試験』が現実的であるが、試験機関の確保に課題がある。」
  • 「一部の指定性能評価機関では、既に海外の性能評価機関で発行された性能評価書を信用証明する事業が行われているが、活用事例が少ない。」
  • 「その他、急速な多層階火災発生に対し全館避難対策、密集地での有機系発泡材の使用による急速な類焼の危険性、外装材及び目地材の劣化による防火性能の低下などの研究が望まれる。」

等を挙げ、

「外断熱はまだ始まったばかりであり、深刻な事故は起こっていないが、現在の工法・材料の取り扱いでは多層に亘る火災を発生させる可能性がある。」

と危機感を指摘し、「中規模多層階防火試験」の優位性を認めながらも試験場の場所・コストの負担を課題に挙げ、海外の既存設備の活用がコスト面で有利であると同時に公正な形で海外の規格を国内で準用することを一案として提示している。

 以上が発表内容の概要であるが、このフォーラムで何度も指摘していたことが消防庁の内部でも取り上げられていることに、改めて心強い思いをした。もちろんこれが消防庁の正式見解ではないが、行政関係者、建築主・設計者・施工者が同様の問題意識を深めることを切に希望するものである。