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日本火災学会誌「火災」の論文より 2006.8

 

 日本火災学会には日本火災学会誌という論文掲載機関誌があり、その2006年8月号に外断熱に関する論文が掲載されたのでご紹介する。

 著者は東京大学大学院の吉岡英樹氏と野口貴文教授である。著者は2006年2月から3月にかけて米国の外断熱防耐火試験機関などを歴訪し、その概要と米国の基準との関係、更にはカナダや欧州の防火試験基準を考察し、最後に日本の課題を述べている。

 内容を拾いながら要点を転記すると、

 「米国における防火関係の法整備は1648年にまで遡るが、防火性能に関する標準化や試験法の整備が行われたのは19世紀末である。1871年、シカゴが大火に見舞われ、多くの犠牲者と会社倒産が生じたことを受けて、建築の構造と防火を規制する法令が制定された」

 「米国には国家が管理する基準は存在せず,IBC(International Bullding Codeのような民間の基準のみが存在し,各市が適切と判断する基準を採択し,地域毎に修正を加えている。IBCに対しては,企米の市の約6割で採用されている。」

 「米国の現状としては、外断熱工法に特化した規制は存在せず、発泡プラスチック等の可燃物を含む外壁に対するものと同じ試験が課される。」

 「トンネル試験、標準耐火試験、潜在熱試験、放射熱暴解試験、多層階火災試験等に合格することが、現在のIBCで求められている。」

 「発泡プラスチック断熱材を多層階建物の外壁に使用するにあたり、
(1)垂直及び水平方向の火炎伝播、(2)剥離、(3)煙発生と毒性、(4)熱可塑性材料の溶融及び落下、(5)消防放水による衝撃、という5つの項目を評価すべきだと考えられた。」

 「1980年に開発された試験法が実大多層階外装防火試験で、内・外壁表面における火炎伝播、芯材における火炎伝播、隣室への火炎伝播等の評価が可能になったが、問題点として、屋外施設であるため天候や風速の影響を受けること、クリブを使用するため加熱の再現性に限界があること、実大規模であるため準備が困難な上に費用が高いこと、等が指摘されるようになった。」

 「実大試験との相関性を維持しつつ、実規模の3分の2に縮小し、火源をガスバーナーに変更した屋内試験施設として開発されたのが、ISMA(中規模多層階試験)である。なお、現在はISMAのみが使用され、実大多層階外装防火試験は施行されていない。」

 「多層階火災試験では、ISMAを使用して外装システムの火炎伝播性状を評価する試験法が定められており、その概略は、
i.外壁表面で、火炎伝橋が起こるのを防ぐ性能
ii.可燃性の芯材成いは他の可燃物の内部にて、垂直火炎伝播が上層に及ぶのを防ぐ性能
iii.内壁表i面で、垂直火炎伝播が上層に及ぶのを防ぐ性能
iv.火災発生区画から、隣の区画或いは空間に、水平火炎伝播が及ぶのを防ぐ性能」

 「ISMAを使用する試験法は、あくまで米国内でのみ使用されるもので、世界標準ではない。カナダには、ULC S134で規定される試験法が存在し、ISO(欧州)にも、別の試験法が存在している。」

 「外断熱工法に対して耐火試験のみによる判断を下す現在の日本の状況は、躯体部分で耐火性能を確保できる限り、外装側にはいくら可燃物があっても構わないと解釈されかねない。そこで、我が国においても、米国、カナダ、欧州等の試験方法に匹敵するような、外装システムに対する防火試験が必要か否かを判断するための議論・研究が、今後必要であると考えられる。」

 なお、実大多層階試験の実際の模様がサンクビット社のサイトでムービーとして見られる。