【経過】
2008年1月25日金曜日午前11時頃、ラスベガスのホテルモンテカルロ屋上で火災が発生した。このホテルは3000の客室があり32階建てラスベガス有数の大型ホテルである。
火災の原因は屋上で作業中、溶接の火花がパラペットに貼られた発泡プラスチックの一部に着火したと言われている。パラペットは見るところ6mほどの高さがあり、外側にはホテルの名前が大きく看板として取り付けられている。
CNNのムービーを見ると、火災はこのパラペットの外側を短時間で横方向に100mばかり拡大して延焼している。この間、パラペット上部に取り付けられた飾り(モールディング)の燃え滓が盛んに落下し、その一部がすぐ下の最上階窓下レベルに取り付けられた出っ張り(飾り縁)に落ちて、そこで火災を拡げ、更に3階下にある同様の飾り縁にも燃え滓が溜まってそこからも火災が拡がることになった。
結局約1時間後に鎮火するまで、ホテルの外壁上部のかなりの部分を焼け焦がし、見た目には相当のダメージを与えた。幸い深刻な人身事故はなく、室内も数室で軽度の被害が出た程度だったというが、かなりの黒煙と炎は全米で生中継され、日本でも土曜日昼のNHK-TVで報道された。火災の様子は今のところCNNのアーカイブで見ることができる。
【EIFSへの疑問】
ここからが我々の関心事である。この外壁は湿式外断熱(EIFS)ではないのか。もしもEIFSならそれは火災に強いはずではなかったか。EIFSはやはり危険なのではないだろうか。
【EIMAからの回答】
これに関し、以前この欄でも紹介したEIFSの業界団体であるEIMAが2月1日付でとりあえずの見解を出している。本文はホームページから取得できるが、翻訳文を作成したのでこちらをご覧頂くこともできる。
短い文章なので説明するまでもないが、要点を並べると次のようになる。
- パラペット部分と飾り縁はEIFSに似ているが発泡プラスチックにウレタンフォームを被覆したものであり、それが火炎を拡大した。
- EIFS部分に火炎が到達したところでは、それ以上火炎が拡大することはなかった。
- EIFSは法が求める厳しい耐火試験を受けた仕様であり、実際の場面でも所定の性能を発揮する。
- 外壁材としてEIFSに似た製品であっても、耐火試験を受験して認定された仕様でないものを外壁の一部であっても使用するべきでないことは夙に強調してきたことである。
【結論】
ここで明らかになったことは、ホテルの外壁の大部分はEIFSで外装されていたが、パラペットと飾り縁だけがEIFS以外の仕様であったためにこの火災が拡大したことだ。EIMAは以前よりEIFS以外の仕様と混在させるべきでないことを文書で警告している。
パラペットがEIFSで仕上がっていれば火災そのものも横方向に延焼などせず、小火(ぼや)程度ですんだものと思われる。この根拠はEIFSの火災実大試験の様子を見れば明らかだ。また調べてみると飾り縁は、たとえEIFS製品であっても壁面より30cm以上突出してはならないという規定があり、今回の飾り縁は目視では1m位出ていたように見える。
改めて確認すると、EIFS(湿式外断熱工法)とは所定の火災試験を(それ以外の試験も含め)受験して合格した仕様を指すだけではない。純正品を正規の工事会社が指定の仕様で施工して建物がEIFSで覆われ、EIFSでないところは完全な耐火性能が確保される材料が使われていることなのだ。この意味において設計者はEIFS仕様を建物全体に徹底させる必要があることを自覚しなければならない。またEIFSメーカーは十分な情報を提供する義務がある。
【責任】
ところで1日の売り上げが100万ドルとも言われる大型リゾートホテルのことだ、人ごとながら事故の責任の所在が気にかかる。もちろん直接の責任は溶接の火花を出した工事会社だろう。しかし、火災を拡大させた責任で設計者、施工会社あたりにも火がつきそうだ。EIFSの関係者は身体を張ってEIFSの仕様を全うしなければ我が身にも火の粉が降りかかってくることを思い知るべきだろう。
【恐怖】
恐ろしいこと。それは発泡プラスチックをそのまま貼り付けて火種を待ちかまえている建物が世の中に存在することだ。差し詰め外壁パネルの内側、外観では見えないところに発泡材を使用した(不燃断熱材を使わない)乾式外断熱仕様は通気層という大気に晒された状態にある。火が回り込まない対策は果たして十分だろうか。(このつづきは次回に)